2017年01月04日

時代が求める顧客満足度

 顧客満足度(CS)という言葉が一般的になって久しいようですが、近年はその重要性がとみに訴えられています。というのも、将来不安の中で、消費者の財布の紐は堅く、そうした状況下でモノなりサービスが選ばれるには、他社との差別化が必要で、そのカギを握るのがCSだというわけです。そしてCSと同時に語られることが多くなったのが、従業員満足度(ES)です。
  しかし、「顧客の満足度向上ならまだしも、従業員の満足度となると、そこに時間やお金を掛ける意味があるのか」と、そんな声も聞こえてきそうです。
確かに従業員を満足させても、会社がなくなってしまっては意味がありません。


 そこで、企業成長に必要だと思われる顧客満足(CS)と従業員満足(ES)の関係性について考えてみたいと思います。

 熱心にCSに取り組むA社では、A社長は自分の知識と経験を総動員して、全社を挙げてCS対策に取り組んでいるそうですが、どうも成果が思わしくありません。どうにもA社長が頭に描いているような活気が社内に見えない、ということらしいのです。

 A社長はかって大手の住宅メーカーに勤めていましたが、「顧客の思いに寄り添った家」を建てる会社を興してみたいという思いでA社を立ち上げたそうです。
 A社は中高級住宅を望む顧客をメインとしており、「顧客の思いに寄り添った」と掲げるだけあって、時には顧客のほうで「まだやるのか」と感じるほど打ち合わせの場を設けたそうです。
 もちろんそれは着工前だけでなく工事中も続きましたし、顧客の家に対するこだわりについても、どうしても無理という場合を除き、できる限りの配慮をしているそうです。
 そうした努力の甲斐もあって、どうやら顧客は念願のマイホームに満足してくれているようですが、A社長はまだまだ納得していないようです。何に納得していないかというと、A社長の理想とギャップが大きかったのは、従業員の働き振りだったといいます。
 簡単に言ってしまえば、顧客の喜びを自分の喜びとしている様子が見受けられないということらしく、こうした状況にA社長は言い知れぬ危機感を抱いていたといいます。

 A社長も、従業員満足度(ES)について知識としてはもっています。
 しかしながらESに対する従業員を不要に甘やかしたり、媚びて接待するようなイメージを拭いきれなかったために、これまでESに力を入れて取り組むことは、あえてしてこなかったそうです。

 ESについてちょっと触れておくと、ESとは従業員が仕事や職場に感じる満足度のことで、CSを向上させるための「前提」とも考えられているものです。


 A社長はこうした考え方を理屈では理解できるのですが、やはりどこかで納得できなかったそうです。
 A社長がESにあえて取り組まなかったのは、CSを追求することで、自然とESはついてくると考えていたからのようです。
 A社長にとって、「顧客の思いに寄り添った家造り」は非常にやり甲斐のある仕事でしたから、従業員たちもこの仕事に全身全霊で打ち込んでみれば、その楽しさが分かるはずだ。仕事に喜びが見出せないというなら、それはまだ本気になっていないから、というのがA社長の考えです。

 A社長の思うように従業員の士気が上がらない中で、ついに恐れていた事態が起こったそうです。士気低迷がA社長のもどかしさだけで済んでいるうちは良かったのですが、それが顧客からのクレームの増加という形で現れたのです。
 いずれも、打ち合わせへの遅刻、設計改善要望の放置など、欠陥住宅ほど決定的ではないにしろ、A社の信用問題に関わることに変わりはありません。
 しかも、当の従業員に遅刻の理由を問い質してみると、彼は「何度も打ち合わせをするのは無意味だ」と感じており、それで他の仕事をしているうちに時間に遅れたというのです。CSの一環である綿密な打ち合わせを、それを実現するはずの従業員が不要と考えていることにA社長は愕然としました。

 そこで急遽、A社長は会社のCS対策について、無記名アンケートを実施したそうです。 士気が低下しつつあることは認識していましたから、ある程度は覚悟していたものの、予想をはるかに超える結果に、A社長はかなりのショックを受けたそうです。
 「成約後の顧客に工事の進捗状況を知らせるメールを毎日送るように言われていたが、変化がなければ無意味ではないか」「打ち合わせは一度で済ませたほうがお互いのためではないか」等々。
 なかでもA社長が愕然としたのは「すべてにやらされている感があった」というものでした。
 従業員の本音を正面から受け止めるのは困難でしたが、A社長は初めて「本当のES」のヒントをつかんだ気がしたといいます。
 とにかく、A社長が感じたのは、従業員との意思疎通の必要性だったそうです。

 A社長は最近、ESについての考え方を改めたそうです。A社長にとってのESとは、組織としての絆を形成することだそうです。
 そのために経営者ができることは、従業員が取り組んでいる仕事にどのような意義があるのかを明確にし、その成果を最大限に引き出せるように支援し、その上で成果を正当に評価することである、と結論付けているそうです。



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